2025/05/26 15:44
キッチンミノルさんが初めて檜原村にやってきたのは2020年12月のこと。「暮らしの手帖」の取材で、弊社・吉田尚樹の1日を撮影するというものでした。
その数日前、取材の段取りを知らせるライターさんから届いたメール…
“7時半頃、事務所に到着するように伺うつもりです。
編集の〇〇さんと私はタクシーで行きますが、
カメラマンのキッチンミノルさんは、車で直接そちらへ伺います。
黄色いバンです。 ”
「ん? キッチンミノル??」となったのが第一印象。
失礼ながら、キッチンさんを知らなかったので、「すごい名前だ」と思ってしまったのです。
さて、取材当日。
事務所近くの社有林…冬晴れのキリッとした空気が漂う森で吉田が木を伐り、作業道を入れていきます。お昼にはポカポカと日の当たる尾根でお弁当! 午後は製材所と木材倉庫、工房を回りました。
まる1日、山の作業を間近で撮影したキッチンさん…
「林業は木を伐る仕事だとは知っていましたが、その前に“道”を作らなければいけないことに驚きました」。
…ということで、ここでぐっと林業に気持ちがのめり込んだそうです。これが「山の木、とどけ!」製作のきっかけとなりました。
「知らない世界」を知ることが面白い! そんな想いで始まった最初の取材は2021年1月。作業道をこれから作るという新規の現場でした。そこでキッチンさんは、弊社・加藤真己から作業道についてさらに詳しく話を聞きます。
その結果、「作業道は山を知った上で、丁寧に作らないと山が崩れてしまう、という事実に感動した」そうです…
取材は2025年2月まで足掛け5年、断続的に続きます。内容は植栽から下刈り、搬出間伐、作業道づくりといった山の作業から、原木市場、製材所、工房、学習机づくりのイベント「6歳になったら机を作ろう!」まで。山から出た木が皆さんの手に届くまでを追いました。
その中でフィジカル的に一番厳しかったのが2023年1月、前日に降った雪が残る標高800メートル近い、東京と埼玉の県境の山での搬出間伐の取材でした。
まず、現場に停めていた重機のエンジンが寒すぎてか動かず…
そして、時間の経過とともに、足底がキンキンに冷え…
足踏みしながらの取材でした。本書10ページあたり、その時の写真が使われていますので、そうだったんだ〜と思ってみてください(笑)
広報としてキッチンさんの取材にはほとんど同行しましたが、いつも思うのは「朝早いな〜」ということ。
林業は朝早い仕事なので大変だろうと思うのですが(キッチンさんは23区内在住)、待ち合わせ場所にはいつも必ず黄色いバンが先に来て止まっていました。
と言って、早めに引き上げる訳ではありません。
午前の撮影を終えて、ここで撮れるものはひととおり撮ったので、今日はこれくらいでいいかと声をかけても、たいてい「まだ作業を続けるなら最後までいます」と答えが返ってきます。
とにかく、撮影現場にいるのが好き、離れたくないようです。
服装は常に上下真っ黒(眼鏡も黒縁)でした。そして首には赤か黄色で「キッチンミノル」と名前が入った、白いタオルをぶら下げているのが定番。足元はいつの間にか、スパイク足袋を履くようになっていました。
ちなみに黒い服装、普段は問題ないのですが、下刈り取材の時はハチ刺されが怖いので、用意していたグレーのロンTに着替えてもらったことも(黒はハチ刺されリスクが高い)。
そんなこんなで、ついに本が完成しました。この「山の木、とどけ!」を読んで、多くの人が林業に興味を持ってくれたら嬉しいです。そして、何年か後、第2、第3のキッチンさんが現れることを期待します!!
本の詳細・ご購入はこちらから↓「山の木、とどけ!〜つなげるつながる木の仕事〜」